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J.S.バッハ イギリス組曲 イ短調 BWV807 [自言自語]

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グレン・グールドの弾くバッハは総てにおいて緻密で、一度耳に馴染んでしまうと「グールドとそれ以外の演奏家」と区別してもいいくらいスタンダードになってしまうから不思議だ。

私がグレン・グールドというピアニストを知ったのは高校生の頃。ちょうどゴールドべルグ変奏曲BWV988のレコードが出たときだった。以来、グールドの弾くバッハのCDは尽く買って聴いている。

中でも特に気に入っているのはグールドを知る切っ掛けとなったゴールドベルグ変奏曲BWV988の新旧の録音、パルティータの第2番BWV826と第6番BWV830(特にトッカータ)、そしてイギリス組曲のイ短調BWV807。

 

今夜はそのイ短調のイギリス組曲を何度も繰り返し聴いている。

 

E-A-Aの音型が何度も何度も繰り返し現われ、畳み掛けるように展開してゆくプレリュード。

オルゴールのように繊細なアルマンド。

悲しみに満ちたクーラント。

アンニュイなサラバンド。

研ぎ澄まされたテンポで踊るブーレ。

息もつかず、どこまでも疾走するジーグ。

まるで何かに憑かれたように……。

それはグールドの演奏全般に言えることなのだが、聴き手は不知不覚(知らず知らずのうち)にその世界に引き込まれる。

 

このところ精神的にも肉体的にも疲れているせいか、眠いのに眠れずにいる。

こういう時は眠っているつもりでも眠りは浅く、頭は限りなく冴えている。

夢を見ているつもりでも夢は夢でなく、思考は絶え間なく続いている。

そんな夜は真空管に火を灯し、ギリギリの音量で音楽に没頭する。

もちろんベートーヴェンでもブラームスでもマーラーでもいいのだが、やはりこういう時はバッハ。

しかもグールドの演奏に限る。

孤独な、そして静かな夜だからこそ一人を満喫したい。

 

明日になれば、また昨日と同じような日々の中へ埋没してゆくのだから、せめて今だけは一人にしておいてくれ。

今夜は電話も、メールも……愛さえも要らない。

あなたのことを忘れたいわけじゃないけれど。

ただそっと、一人にしておいてくれ。

 


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shio

お久しぶりです^^
お疲れの様ね^^;
私の知らない世界だわ♪
でも・・そう言う時ある^^
たった一人の世界に入りたい時・・
そうなの・・忘れたい訳じゃなくて・・
静かに時間の流れを感じて居たい時・・・

by shio (2011-01-28 07:10) 

hironeko

shioさんへ
視覚は目蓋を閉じれば一時的に機能を停止できますが、聴覚は手で耳を塞いでも身体の中に伝わる様々な振動が「ノイズ」として聞こえます。
こうした些細なノイズさえも遮断するには「音楽」に没頭するのが一番で、「音楽」以外の「音」を遮断して自分だけの世界を囲い込んでしまうのです。
ある意味で贅沢な、そして我侭な話ですね。
by hironeko (2011-01-29 17:20) 

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